カテゴリ:
貫井徳郎の『壁の男』、タイトルからは想像できないくらいに繊細で読み応えのあるいい本でした。
栃木県北東部にある緑豊かな集落の家々の壁に奇妙な絵が描かれているとネット上で話題になることから物語が始まります。しかもその絵は子供の落書きのような稚拙なもので芸術とは程遠く、そのことに興味を持ったノンフィクションライターの鈴木は現地に行って取材を開始します。絵を描いていたのは物語の主人公の伊刈という男、奇抜さとは無縁なこの男の半生と隠された真実が浮かび上がってきます。
父母、恋人、友人、同僚、夫婦、子供、近隣の人達など多くの登場人物の関係性を横軸に、伊刈の子供時代から会社勤めを経て家庭をなし、そして故郷へ戻っての生活までを縦軸にして、それぞれの場面が非時系列的に描写され進んでいきます。嫉妬、病気、出会い、別れなど人生につきものの喜びや哀しみを優しいタッチで丁寧に描いており、最後に明かされる驚くような真実が感動的で泣かされてしまいます。
ぜひ読んでいただきたい一冊です。
PC120025
にほんブログ村 地域生活(街) 北海道ブログ 函館情報へ