「ホテルローヤル」
- カテゴリ:
- ちょっと面白かった本
重苦しい閉塞感のある日々に男と女が求める一瞬、その瑞々しさを切なく描写する作者の筆はさすがです。ただ、それほど頁ボリュームはありませんが、ちょっと疲れるモチーフかなというのが個人的な読後感想です。
函館男声合唱団の第9回定期演奏会を聴いてきました。「男声(おとこ)が歌う 四季の彩」と題するコンサートで、第一部は文部省唱歌などの「歌い継ぎたい日本の歌」、第二部は愛唱歌などを綴った「世界の男声合唱名曲」、第三部は吉野弘作詞・高田三郎作曲の男声合唱組曲「心の四季」で構成されています。
男声合唱の魅力は、小岩代表が仰られているように"力強さと繊細さ"、"重厚なハーモニー"なのでしょうが、男声合唱の醍醐味を堪能させていただいた素晴らしい内容のコンサートでした。
とりわけ第一部の冒頭で歌われた「からたちの花」の伊藤喜久雄さんの独唱には感動しました。お歳を重ねるほどに声に繊細さと艶が増してきているようですね。ブラボーでした。
また第三部の「心の四季」も良かったです。四季の移ろいのなかに人生を見つめる美しい詩、そしてどこか賛美歌を思わせる心に沁みる旋律・・・島昌之さんの指揮、団員の皆さんの演奏から存分に作詞者・作曲者の意図するところ、魅力が伝わってきました。名演でした。
帰りは団員皆さんによるロビーコンサートで見送っていただきました。見慣れた顔ぶれの方々ばかりで、やはり聴くよりも歌うほうが楽しいかなと、ちょっと複雑な心境で会場を後にしました。(^^♪
第145回直木賞受賞作、池井戸潤の「下町ロケット」も面白かったです。
下町の町工場が国産ロケット開発に関わる物語ですが、大企業のエゴに立ち向かう町工場の社長、社員達の勇気、そしてモノ造りに対する情熱、奮闘に胸が熱くなりました。本から溢れんばかりの沢山の夢、最後にはスカッと爽快・・・そんな素晴らしい内容です。
もう一度若者に戻ることが出来たら、間違いなく佃製作所に入社しているでしょうね。(笑)
東野圭吾の「ナミヤ雑貨店の奇蹟」はほぼ一日で読むことが出来ました。ちょっと心温まるファンタジックないい小説です。
物語は都心から数時間ほど離れたベッドタウンの町外れにある今は誰も住んでいない廃屋同然の「ナミヤ雑貨店」。ここに偶然忍び込んだ3人のコソ泥の若者が、過去と現在の時空を越えた不思議な体験をするという内容です。雑貨店は老店主が生前に近隣の人たちの悩みに手紙で応えていたのですが、この老店主の33回忌当日の一夜だけ雑貨店が復活するのです。そして、この一夜の出来事にこの若者達が巻き込まれてしまいます。それぞれの相談者の悩みはいずれも切ないものばかりですし、すべての登場人物が不思議な糸で繋がっていて、読み進むにつれてほろりと泣けてきます。
一夜だけの奇蹟。「ナミヤ雑貨店」・・・私の町にもあればいいなぁと思います。