『風は西から』 村山由佳
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物語は幸せそうなカップルの日常から始まります。同じ大学のサークルで知り合い、夢と希望をもった、ごく普通の若者である藤井健介と伊東千秋がこの物語の主人公です。健介の両親は広島で居酒屋を営んでおり、彼は将来この店を継いで大きくしたいという夢を持っています。ノウハウを学ぼうと就職したのが、大手居酒屋チェーンの「山背」という会社です。この会社を創立した山岡誠一郎というカリスマ経営者に心酔するのですが、入社してみるととんでもないブラック企業だったのです。本社勤務から繁盛店の店長となると生活が一変することになります。度を超えたサービス残業など悪質な労働環境、さらに人格を否定するような吊し上げなどが常態化しています。数ヶ月後、心身ともに疲れ果てた彼は、正常な判断をする精神的な余裕さえ奪われて自死を選んでしまいます。
健介の死後、千秋は彼の両親とともに、このブラック企業「山背」から労災認定と謝罪を獲得すべく奔走することになります。3年9ヶ月にもおよぶ長い闘いでしたが、大切な恋人と最愛の息子を失った小さな個人の思いが、大企業ひいては社会をも動かす大きなうねりとなって広がり、最後には勝利を勝ち取ります。
あらためてブラック企業の悪辣さを思い知らされましたが、若者の過労死や自死の報道を見るたびに、これは氷山の一角なのだろうなと思ってしまいます。「電通」や「和民(※正式には子会社のワタミフードサービス)」での過労死問題を見るにつけ、東証一部上場にあるまじき企業体質と思ってしまいます。このところの異常気象もそうですが、日本いや世界はどうなっちゃったのでしょうね。
最後に吹く西からの風が千秋たちにとって心地いいものだったのが、せめてもの救いだったと思います。
健介の死後、千秋は彼の両親とともに、このブラック企業「山背」から労災認定と謝罪を獲得すべく奔走することになります。3年9ヶ月にもおよぶ長い闘いでしたが、大切な恋人と最愛の息子を失った小さな個人の思いが、大企業ひいては社会をも動かす大きなうねりとなって広がり、最後には勝利を勝ち取ります。
あらためてブラック企業の悪辣さを思い知らされましたが、若者の過労死や自死の報道を見るたびに、これは氷山の一角なのだろうなと思ってしまいます。「電通」や「和民(※正式には子会社のワタミフードサービス)」での過労死問題を見るにつけ、東証一部上場にあるまじき企業体質と思ってしまいます。このところの異常気象もそうですが、日本いや世界はどうなっちゃったのでしょうね。
最後に吹く西からの風が千秋たちにとって心地いいものだったのが、せめてもの救いだったと思います。