カテゴリ:
直木賞と本屋大賞の2冠に輝いた『蜜蜂と遠雷』とは真逆と言ってよいほどの不思議な世界を描いた連作短編集でした。私の中では『蜜蜂と遠雷』が恩田作品に接した初めでしたので、この方の作風の幅広さには驚いてしまいました。

さて、その物語の舞台となるのは過去に軍の重要な施設があったという錦糸町、川崎、上野、大阪、呉、六本木の六つの街。世の中に戦争への気運が高まると、これらの街のどこかに裂け目が生まれ、そしてそこから「グンカ」という兵士の亡霊が溢れ出てくるのです。主人公である元夫婦は、血筋として継いだ特殊能力を駆使して「グンカ」を退治し、裂け目を縫うという任務に就いています。

現実とはまったく異なるダークファンタジーの世界を鮮やかに細密に描き出す恩田さんの筆の力はさすがと思いました。ここにきて朝鮮半島の緊迫化にともない現実世界でも軍靴(ぐんか)の音が聞こえて来そうなキナ臭さを感じる昨今、時代の風を感じさせる一冊なのかなと思っています。
P4190002
にほんブログ村 地域生活(街) 北海道ブログ 函館情報へ