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大好きな小川糸さんの『ミ・ト・ン』。この本もいいですね。

物語の舞台は、バルト三国の一つ「ラトビア共和国」、小説の中では「ルップマイゼ共和国」となっています。その小さな国は日本と同じような多神教の国で、すべての物には神や精霊が宿ると信じられています。昔ながらの伝統と自然を守り、つつましく人々は暮らしています。そんな小国にありながら温かい家庭に生まれたマリカという女性の一生を綴った物語です。彼女のそばには美しい毛糸で編まれた手袋・ミトンがいつも沢山あります。ミトンには各々に深い意味のある幾何学文様が編み込まれ、赤ちゃんの誕生や結婚式、人生の終わりなどに送ったり送られたりする習わしがあります。

彼女の初恋の人で、のちに良き伴侶となるヤーニスもラトビア人らしい魅力的な男性です。彼は養蜂家として愛するマリカを支えるのですが、結婚後数年して旧ソ連(小説の中では「氷の国」)に連行されて消息が不明になります。

占領下の苦しい日々に耐えながらも、ヤーニスとの楽しき日々の思い出を胸に笑顔を絶やさなかったマリカの生涯、そして彼女を支えた美しい毛糸の手袋・ミトンの存在が心に残ります。ラトビアの美しい風景に思いを馳せ、お読みになってみてください。
《図書館からお借りしました》
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巻末には小川糸さんのトラベル・エッセイと平澤まりこさんの可愛いイラストが掲載されています。小川さんと平澤さんは本著を発刊する前に3回ラトビアを訪問されているそうです。宝石のようにキラキラと輝くラトビアの人々の暮らしと風景に魅了されたと仰っています。ぜひ行ってみたいなと思っています。
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