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原田マハの『たゆたえども沈まず』。これも面白かったです。

まずもって『たゆたえども沈まず』というタイトル。小説の中でゴッホが呟く言葉なのですが、ラテン語で「Fluctuat nec mergitur」と綴るようです。パリ市民であれば誰でも知っているもので、もともとはセーヌ河の船乗りたちのお守りみたいな言葉で「どんな困難があってもたゆたいながら、沈まず負けずに踏ん張る」という意味なんだそうです。

物語は、あのフィンセント・ファン・ゴッホの弟のテオドルス・ファン・ゴッホが一人目の主人公。そしてもう一人は明治初期に単身渡仏した実在の美術商・林忠正の開成学校の後輩で、後に彼の助手となる加納重吉という架空の人物です。兄弟愛で結ばれた弟・テオドルスから見た兄・フィンセントの話を縦軸に、日本文化や美術の紹介に努め高い見識を備えた林忠正を傍から見つめる加納重吉の話を横軸に物語は進んでいきます。
印象派やポスト印象派の画家たちに影響を与えたジャポニスムの仕掛け人である林忠正ですが、良く知られているゴッホ兄弟の物語に豊かな彩りを添えています。表紙の装丁画に使われているニューヨーク市近代美術館(MOMA)の名作「星月夜」は、4人の思いが手繰り結び合って描かれたという設定で物語はドラマチックにフィナーレを迎えます。なお、この作品は、1889年にサン・レミ・ド・プロヴァンスのサン・ポール・ド・モゾル修道院の精神病院での療養中に描かれたものです。

現在、京都市でゴッホ展『巡りゆく日本の夢』が開催されていますが、あわせてご覧になると楽しいと思います。
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