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村山早紀の『百貨の魔法』を読み終えたところです。この本も星5つあげてもいいくらいに面白い小説でした。前作の『桜風堂ものがたり』の銀河堂書店も、この星野百貨店のテナントとして登場します。

風早という街の商店街にある老舗デパートの星野百貨店が物語の舞台です。全国どこの百貨店も同じでしょうが、この星野百貨店も御多分にもれず、時代の波には抗しきれずに閉店が近いのではと噂されています。そんな星野百貨店には金色と銀色の目を持つ幻の白い猫が住んでいて、人々の願い事を叶えるという魔法のような都市伝説があります。百貨店のエントランスに桜の花びらが舞い込む季節、コンシェルジュ・カウンターに芹沢結子という謎めいた女性が就任します。さあ、そこから魔法にかけられたような店員たちの不思議な物語が動き出します。

私のなかのデパートというと函館の『棒二森屋』です。1869年(明治2年)に『金森森屋洋物店』として創業したのが始まりですから、創業150年の老舗中の老舗ということが言えると思います。郊外に大型の本州系大型スーパーが相次いで進出したことなどがあり、1980年代から急速に売り上げを落とし、ついにダイエー傘下に入ったのち、1994年に運営していた『棒二森屋』株式会社は清算・消滅しました。現在もイオン系列として名前はそのままに営業していますが、本館建物の老朽化が激しく、取り壊しを含めて議論されているようです。

・・・60年近くも前の昔々の『棒二森屋』でのお話です。
ハレの日に母に手を引かれてエントランスを通り抜ける感じは、大袈裟に言うとディズニーランドに入り込むような高揚感に溢れたものだったように思い出しています。化粧品、皮製品、高級たばこ、そして地階から立ち上ってくる食品の匂いがまじりあって、何ともゴージャスな雰囲気に溢れている空間に胸が高鳴った記憶があります。書店は勿論のこと、スポーツ用品、小鳥などのペット、楽器などなど何でも揃っていましたし、美味しいものばかりでなかなかメニューを決めきれなかったデパートの食堂、そして極めつけは屋上の遊園地でしたね。そうそう、最上階には小さいながらも映画館もありましたよ。

デパートを一歩外に出ても電車道路には行き交う人で溢れ活気に満ちていました。現在は、櫛の歯が欠けたように空き地が目立ち、シャッターを下ろすお店が増えて、人通りも途絶えている『棒二森屋』界隈ですが、賑やかだった時期を知っているだけに何とも寂しい限りです。私のなかの昭和はどんどん遠くなりつつあります。

・・・再び本の話に戻って。
この『百貨の魔法』も、本屋大賞を受賞して欲しいなと思っています。
あなたの中のキラキラするような思い出のデパートを蘇らせてくれる素敵な一冊です。
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