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中山七里の『護られなかった者たちへ』を読み終えました。

物語の舞台は震災後の「ヒト・モノ・カネ」が集まっている仙台です。ある日、全身を縛られたまま放置され、餓死させられるという驚愕の連続殺人事件が起きます。一人目は誰もが善人と認める市の福祉保健事務所職員、二人目はこちらも人格者と名高い現役の県議会議員です。 
この連続殺人事件が起きる数日前にこの物語の主人公である利根という男が7年の刑期を終えて出所していました。利根は知人の生活保護申請を巡って塩釜の福祉職員らと口論になり、相手を殴った上に庁舎に火を放ったことで逮捕され、懲役10年の実刑判決を受け、模範囚として7年で刑期を終えていました。物語は、事件を捜査する県警の刑事の人生とも絡んで複雑に進行していきます。
利根と殺害された二人の接点とは・・・思わぬ展開が待ち受けていますし、最後のどんでん返しが凄いです。
これ以上のネタバレはこの小説の面白さや興味を半減させてしまいそうですので、これくらいにさせていただきます。

ミステリーとしても面白いですが、生活保護を巡る日本の社会福祉制度の問題点に着目して物語が構成されていますので、とても骨太で読み応えがあります。おすすめしたい一冊です。

最後に犯人がSNSに投稿していた犯行声明の一部を掲載させていただきます。(P379~380)
『現在の社会保障システムでは生活保護の仕組みが十全とはとても言えません。人員と予算の不足、そして何より支給される側の意識が成熟していないからです。不正受給の多発もそれと無関係ではありません。声の大きい者、強面のするものが生活保護費を掠り盗り、昔堅気で遠慮や自立が美徳だと教え込まれた人が今日の食費にも事欠いている。それが今の日本の現状です。そして不公平を是正するはずの福祉保健事務所の職員の力はあまりに微力なのです。(中略)護られなかった人たちへ。あなたは決して一人ぼっちではありません。何度でも勇気を持って声を上げてください。』
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