『蒼き山嶺』 馳星周
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物語の主人公は北アルプス北部地区遭難対策協議会で働いている得丸志郎です。山に登る仕事がしたくて長野県警の山岳救助隊員になったのですが、交番勤務を命じられて退職。妻とは離婚して好きな「山屋」をしているものの山岳ガイドなどを掛け持ちしたりして慎ましく生活しています。そんな得丸が残雪期の白馬連峰をパトロールしている時に大学の山岳部時代の友である警視庁公安部の池谷博史と偶然再会します。池谷は卒業後殆ど山には登っていないこともあって初心者同然で、得丸へ白馬岳山頂までのガイドを依頼します。そして、徳丸が気象情報などを得るために麓の仲間に電話を入れた際に、麓では検問などが敷かれて大騒動になっていることを知ります。背後を振り返ると池谷が拳銃の銃口を押しつけて、白馬岳を越え栂海新道を通って日本海まで連れて行けと命ずるのです。
旧友との再会もそこそこに恐怖におびえつつトレースもすぐ消えるほどの激しい猛吹雪のなかを山行することになります。そんな折、もう一人の女性登山者と出会うことになります。三枝ゆかりという相当な登山スキルを持った女性ですが、不運なことに彼女も池谷の逃避行の渦中に巻き込まれてしまいます。この三枝ゆかりは、またまた偶然なことに二人の大学時代の同期で同じ山岳部に所属した若林純一の妹だったのです。若林は大学時代から天才的な才能を発揮し、卒業後は有名クライマーとして名を馳せて、世界の8000m峰14座の半分を制覇するまでになっていましたが、惜しくもK2で雪崩に遭って命を落としていました。
想い出すのは、「3羽烏(からす)」と言われ互いに切磋琢磨し夢と希望に溢れた青春の日々のこと。一方、現実はと言えば、過酷な悪天候の中を死と隣り合わせの苦しい逃避行に付き合わされる我が身。それらが行きつ戻りつして物語が進んでいきます。池谷の目的は何なのか、現在の朝鮮半島の問題とも絡んでタイムリーな山岳ミステリーです。
これから先は小説をお読みになってください。面白くて最後まで一気に読んでしまいたくなる一冊です。

コメント
コメント一覧 (2)
四週間ぶりに伊達図書館に行きましたら、この本がありました。一気読みでした。makotoさんのおすすめ本は、いつも面白いのですが貸出中ばかりで、順番がまわってきたときは東京にいたりして、なかなか読めません。本屋大賞にノミネートされるような人気本ですから、仕方がないですね。
後ろ立山連峰はスキーで栂池高原、八方尾根、五竜遠見に行っただけです。八方尾根には大学の山荘があって安く泊まれたので、何回か行きました。
登山では、高1の山岳部の夏合宿で立山、劔岳に登りました。劔岳は当然一番やさしいルートで登ったのですが、大変でした。
お勧めの本を気に入ってくださり嬉しく思っています。
毎月沢山刊行される中から面白い本を選び出すのは結構大変ですもね。
この本はとても面白く私も一気読みでした。
山をやる人は、山を舞台にした小説に飛びついてしまいますね。
siさんのように学生時代から山岳部に身をおいた人は尚更だと思います。
北アルプスを縦走していた頃を思い出していたことでしょうね。