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特定の組織の会員になることはあまりないのですが、名古屋に本部を置く「自然の権利」基金という会だけは20年以上前から会員を続けています。会員と言いましても会費を払っているだけなのですが、きっかけは1995年の奄美大島のアマミノクロウサギに纏わる裁判でした。

事の発端は、1995年に奄美大島での大規模なゴルフ場建設に反対する住民たちが、林地開発許可処分の取り消しなどを求めて、鹿児島地裁に提訴したことに始まります。この訴訟は、日本で初めて動物たち(アマミノクロウサギ・オオトラツグミ・アマミヤマシギ・ルリカケス)を原告にしたことで、非常に注目されました。当時は観光開発が盛んで、奄美大島にも多くのゴルフ場の造成が計画され、アマミノクロウサギなどの絶滅危惧種の生息域にもその波は押し寄せてきました。
ただ、動物は裁判の当事者になることは出来ませんので、当然のように鹿児島地裁は提訴から1ヵ月後に訴状を却下しました。その後、住民たちが動物たちに代わって訴訟を起こし裁判が開かれましたが、地裁は住民たちの原告適格を否定し訴えを却下しました。
住民からすれば地裁の判決は予想の範囲内だったと思われます。そして、天然記念物や絶滅危惧種に指定された奄美の固有種であるアマミノクロウサギたちを裁判の上では守れなかったものの、現行法のもとでは自然環境を保護することの困難さやその限界などを、世間の人たちに知ってもらえたことなどで一定の成果はあったと感じていました。同時に「自然の権利」を広める運動も同時並行で展開され、各地の自然保護活動の一環として今も続いています。

そんな、「自然の権利」基金の今月号の会報に表題の「えりもの森訴訟」のことが載っていました。2004年、北海道が日高管内えりも町の道有林で違法伐採を行ったものですが、この行為に対し札幌の市川弁護士ら3人が道財産に損害を与えたとして、日高振興局長(旧支庁長)を相手取って訴えたものです。
会報に掲載された市川弁護士の投稿は小さくて読みにくいと思いますので、テキストとして再掲載させていただきます。

《えりもの森訴訟》
 すでに、ご報告しているとおり 、この訴訟は、保安林指定されている天然林を違法に伐採したことを理由とする住民訴訟です。裁判は13年目に突入し 、最終段階に入りました 。
 損害賠償の相手方は、支庁長と森林つくリセンター長です。支庁長というのはなじみがない人も多いかと思いますが、北海道は広いため全道が10近い支庁に分かれていました。一つの支庁管内は県程度の広さがあります。支庁長は知事から全委任を受けていますから 、知事の代わりといったところです。
 証人尋間では、支庁長は具体的な職員の指揮監督などはしていないことを自白しました。指揮監督などはしていなければ責任もないという立場です。しかし保安林内の越境伐採や過剰伐採を問題にしているのですから 、保安林規定上はかなりの指揮監督権限があります。
 最終盤では、このような具体的な支庁長や森林つくりセンター長の職務義務とその違反の有無が争点となりました。
 裁判所は、事実整理をほぼ終了し、原被告の双方に示しています。事実整理はほぼ良いのですが、裁判所がどのような認定をしていくのか、注目です。裁判所は、二度と差戻しにならないようにと慎重な態度をとっています。
 ところで、このえりもの森訴訟を提訴してからえりもの森林はどうなったかについてご報告いたします。提訴当時は、周辺一帯が広く伐採の予定でした。大規模林道計画も近くにあったため、えりも地域はかなり皆伐されるところでした。しかしこの裁判が提訴されて以来、全く伐採されなくなりました。林道は自動車も通行できないくらいに至るところが通行不能になっており、道職員はおろか林業関係者も山に入っていないことが歴然としています。山は、ヒグマ、エゾシカ、コウモリ、ナキウサギ、オオワシ、オジロワシなどが自由に行き来し、サクラソウやクリンソウなど様々な花が今を盛りとばかりに咲き乱れています。
 これだけを見ても、訴訟を起こして良かった、と思っていますが、さらに勝訴を目指して頑張りたいと思います。
(文)えりもの森訴訟弁護団 弁護士 市川守弘

「自然の権利」基金では、沖縄のジュゴンや辺野古、大浦湾の自然を守るための活動も行っていますので、興味のある方やご賛同いただける方は、同基金へお問い合わせくださればと思います。
一般会員の年会費は3000円です。「自然の権利」基金のホームページはこちらです。
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