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原田マハの『スイート・ホーム』。今まで読んだ作品とは少し趣きが違いますが、ほっこりと温かくなる感じの短編集で、まあまあ良かったと思います。

作品の舞台は、宝塚歌劇団で知られる宝塚にほど近い閑静な住宅街にある「スイート・ホーム」という洋菓子店です。玄関脇にはキンモクセイの木があり、小さな花が咲く秋にはキンモクセイと洋菓子の甘い香りとまじりあって、何とも素敵な空間というか雰囲気を醸し出しています。このお店は表題作の『スイート・ホーム』で主人公として登場する香田陽皆(ひな)の父親がパティシエをしています。家族は職人気質で気の優しい父と自称「看板娘」の母、そして年頃に育った陽皆と妹の晴日(はるひ)の美人姉妹です。宝石のような輝きと、温かみの溢れるスイーツ、そして丁寧な接客が評判を呼んで、地元の超人気店になっています。
香田一家の何気ない日々の暮らしを縦糸に、そしてこのお店を訪れる常連さんとの語らいや姉妹の恋人達との遣り取りを横糸に、それぞれの短編が暖かい視線で丁寧に描かれています。香田一家はもちろんのこと、登場人物のすべての人がいい人で、そして物語の最初から最後までひとつの翳りもない夢のような幸福な風景で彩られています。

読後感は冒頭の感想のように、まあまあいい本なのですが・・・
こんな幸せな日々を過ごしてみたいなと思う反面、こんなお伽話のようなハッピーな生活なんてあり得ないから小説になっているんだという邪念が頭をもたげてきます。甘ったるいスイーツ風の生活ばかりでは食傷気味になるでしょうし、たまには塩辛い煎餅を食べるような生活も交えたほうがいいのではと、臍曲がりのお爺さんは思うのであります。(笑)

そんなことを思って巻末を見ましたら、関西方面の不動産会社のホームページに書き下ろされた小説であるらしいことが分かり、「なるほどねぇ」と頷いてしまいました。確かに、こんな人たちと楽しく超ハッピーな暮らしが待っているなら、この街に住みたいと思う人がいるかもしれませんね。
この手の本がお好きな方は、お読みになってみてください。
《図書館からお借りしました》
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