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辻村深月の『青空と逃げる』を読み終えたところです。
『かがみの孤城』で2018年本屋大賞を受賞した辻村さんの作品だけあって、読み応えのある素晴らしい一冊でした。

主人公は本条早苗という主婦とその息子で小学5年生の力(ちから)です。早苗の夫の拳(けん)とは、ともに都内の小さな劇団に所属していたことがあり、そこで知り合い結婚をしました。3人は平穏に暮らしていましたが、ある日の深夜、夫が乗っていた車が事故を起こしたと警察から連絡が入ります。その後の調べで、人気女優の遥山真輝の運転する車に一緒に乗っていたことが判明し、さらに悪いことに彼女は顔の怪我がもとで入院中に自殺してしまうという悲劇が続きます。遥山と拳のスキャンダルは連日、週刊誌やワイドショーを賑わせ、思わぬ形で事件の関係者になってしまった早苗と力は、真偽の定かでない情報と周囲からの悪意を避けるために東京を離れることを決めます。しかも東京を離れる前日には、力の部屋のクローゼットの中に大量の血に染まったバスタオルと包丁を偶然発見し、早苗は気が動転してしまいます。
様々な要素を載せた物語は、高知の四万十川、兵庫県の瀬戸内海に浮かぶ家島、大分の別府温泉、そして仙台、北海道の大空町へと舞台が移っていきます。遥山の関係者と思われる怪しい者たちの追跡から逃れる二人の逃避行はスリリングですが、行く先々で出会う人たちはいずれも善良で優しく、二人の身を案じて暖かく接してくれます。逃避行の旅でいろいろな人々や出来事に接することで、早苗が母親として日々強くなっていき、思春期の力も健やかに成長していきます。
物語は、早苗と力が交互に主人公になり進んでいきます。夫であり父である拳の行方は終盤まで分からず、また事件の真相も同様に謎に包まれたままの、ちょっぴりミステリー的な要素も絡んで物語は佳境に向かっていきます。そして、最後は感動の結末が待っているのですが、それは読んでのお楽しみということで。
家族の絆、人の優しさを実感できるところが辻村作品に共通する素晴らしさなのかなと思っています。
《図書館からお借りしました》
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