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吉田修一の『ウォーターゲーム』を読み終えたところです。
『太陽は動かない』『森は知っている』に続く、「産業スパイ・AN通信」シリーズ第3弾です。 前2作を読んでいませんので、最初ちょっと物語に入り込めなかったのですが、この3作目だけでも充分に楽しめる内容になっています。
冒頭からダムの爆破など少し現実離れしたお話から始まるエンタメ系の小説で、水道事業の利権をめぐる騙し騙されのコンゲーム(confidence game 信用詐欺)がスピーディなタッチで描かれています。国内の水道事業民営化に纏わる政財界の怪しい影、そして国際的な利権が複雑に絡み合う中央アジアの水資源問題と、場面は世界を股にかけて目まぐるしく変わっていきます。ミッションインポッシブルを思わせるスパイたちの情報戦など、ハラハラドキドキの連続ですので、お好きな方には堪らないかも知れません。

話は変わりますが、この7月5日に私たちには十分に知らされないまま、水道法改正法が衆議院本会議で可決されましたね。そう、W杯での日本代表の活躍に湧き、オウム真理教の松本被告ら7名の死刑執行に驚かされた週でした。この小説のように水道事業の運営権を民間に売却できる仕組みが盛り込まれた法案で、自民・公明両党などの賛成多数で可決されています。海外ではフィリピンとボリビアで民営化が失敗しており、わが国でもこのまま民営化して大丈夫なのだろうかと思ってしまいます。人間が生きていくうえで最低限必要なのは「空気」と「水」ですからね。

《図書館からお借りしました》
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