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第159回の芥川賞を受賞した高橋弘希の『送り火』を読み終えました。
 
主人公は、父の転勤に伴って東京から津軽地方の山間に広がる小さな集落へと引っ越してきた歩という少年です。東京にはない見渡す限りの緑豊かな山々、裾野に広がる田圃と畦道、茅葺き屋根や囲炉裏のある家、そして独特の方言や風習が醸し出す風景に目を瞠ります。今年度限りで廃校になる中学校に転入し、思いのほか簡単に学級の輪の中に溶け込んだ歩でしたが、ほどなくして学級の中心人物の晃がひとりの級友に酷い暴力を振るっている事実を知ることになります。

これ以上のネタバレをしますと、この小説の魅力が半減しちゃいますので、このへんで止めますが、すみずみまで抑制の効いた美しい語り口で綴られた文章からは、登場人物の心理とその場の状景が手に取るように分かります。まさに怖い名作の映画を観ているような感覚にとらわれます。

短編のような短い小説ですが、物語からはいろいろなことが読み取れます。まず、都会から来た者が地方へ向ける身勝手な感傷と蔑視、そして厭なら抜けられるという非定住性。そこから生まれるあくまでも傍観者としての振る舞いや態度。この小説では、いじめの被害者と加害者という単純な括りではなく、俯瞰というか上から目線的な傍観者としての立場に焦点を当てています。ラストでは、そんな傍観者であった歩に対して思いもしないような復讐が待ち構えています。
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