カテゴリ:
"左手のピアニスト、生きる勇気をくれる23の言葉"との副題がついてる舘野泉の『命の響』を読み終えました。"左手の"という部分だけがあまりにも有名になり過ぎて、「左手でどのような演奏をするのだろう」という少し興味本位で舘野さんを見ていた部分が私自身にもありましたが、そんなことを遥かに超越しているというか、新たな音楽の可能性や魅力の追究に挑戦している舘野さんの姿を存分に知ることのできる一冊でした。

遥か昔、確か音鑑(労音)主催だったように思うのですが、リサイタルで舘野さんのピアノを聴いたような気がしています。聴いたような気がしているというのは舘野さんに失礼なのですが、正直あまり記憶に残っていないのです。私も若かったですし、新進気鋭の「北欧音楽のスペシャリスト」というパンフレットを見て、リサイタルを聴きに行ったのかもしれません。

それから何十年になるのでしょうか、間近でお見かけした一昨年の清和の丘コンサートでの舘野さん。以前のように颯爽という訳にはいきませんでしたが、左手から紡ぎ出される音は、深く心に沁みわたるものでした。この本を読んでみて、ここまでの道のりでの心の葛藤、すさまじいリハビリの日々などを知り、あの清和の丘コンサートで見せてくれた柔らかい表情のことを私なりに納得することが出来ました。
清和の丘コンサートで弾いてくださったカッチーニのアヴェ・マリア。このブログを書きながらCDで聴いています。あの時の演奏を思い出すと今でも胸が熱くなります。
P1310002
厚沢部町での清和の丘コンサートのことも書かれています。
そうそう、一昨年のコンサートの終演の後にトイレに行き、何気なしに気が付いたらお隣に舘野さんがいらっしゃいました。間が悪いことに廃校の古いトイレで、しかも男子用は2つしかないというシチュエーションです。舘野さんがお先に用を足しておられ、私も所定位置に着いた手前出るに出られない状況になってしまいました。軽く会釈をして、まさしく舘野さんと「感動」のツレションです。気の利いた言葉も思い浮かばず、無言のままの時間の長かったこと、忘れることが出来ません。トイレでなければ、何か簡単な言葉を交わして握手くらいはしてくださっと思うと残念でなりませんが、後にも先にも一生の思い出になることは間違いないようです。(^^♪
P1310006