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小川糸さんのエッセイ集『針と糸』を読み終えたところです。

ベルリンと東京を行ったり来たりしているようで、このエッセイでは主にベルリンでお暮しになっていて感じたことなどが多く書かれています。小川糸さんはラトビアがお好きだったようですが、ベルリンの街並みや佇まいもとても気に入っているようです。

とくに印象深かったのが、第1章の「日曜日の静けさ」でした。ベルリンで暮らして最初に驚いたことは、街中のお店の殆どが日曜日には休みになることだったそうです。街全体がシーンと静かになってしまい、おまけに買い物も出来ず戸惑ったといいます。

そうそう、私と家内も半世紀近く前になりますが、スイスのジュネーブで暮らしたことがあります。もちろん結婚前ですから、お互いに別々に生活をしていました。今でも思い出したように言うのは、スイスと日本の日曜日や休日の過ごし方の違いです。ジュネーブもベルリンと一緒で日曜日は小さなカフェなどを除いてすべてのお店は閉店になります。最初は戸惑うものの慣れてくると小糸さんと同じように静かでいいなと思うようになりました。教会に行く人、野山を散策する人、家で静かに本を読む人、子供と公園で遊ぶ人、日曜マーケットを楽しむ人など、思い思いに日曜日を楽しんでいる人たちを目にしました。ジュネーブは20万人程度の小さな街ですが、ベルリンは350万人もの大きな街ですから、なおさら平日と週末の人の流れなどの違いは大きいのでしょう。

日本のようにお正月も日曜日もかまわず24時間や夜間営業をするコンビニエンスストアやスーパーマーケット、ドラッグストアは便利でいいかも知れませんが、働いている人や社会に与える負の要素などを考えると、このままでいいのだろうかと思ってしまいます。地方都市はそんなでもありませんが、たまに行く東京などは不夜城のようで田舎者には毎日がお祭りをやっているような感じがしますもね。

現在のジュネーブの様子は分かりませんが、スーパーマーケットは私たちが住んでいた当時もあった"coop(コープ)"と"Migros(ミグロ)"程度でしょうし、コンビニに至っては殆どないかあっても僅かなのではないでしょうか。この半世紀近くの間の日本の目まぐるしい街並みと経済の変化、そして殆ど変わっていないのではと思うヨーロッパ、この違いは何なのでしょうね。単なる「石」と「木」の文化の違いだけではないような気がしています。
小糸さんはベルリンには日本的な便利さはないけれど、それ以上に生活は充実して楽しいと仰っています。ベルリンに恋している小糸さんの気持ちがちょっぴり分かるような気がしています。
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