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一昨日のクラシック倶楽部『反田恭平 オール・ショパン・プログラム』も楽しまれた方は大勢いらっしゃることでしょう。私も彼のファンクラブに入っているひとりです。そう、『ピアノの森』で一ノ瀬海くんの先生である阿字野壮介役のピアニストとしてブレークしていますよね。

今回はポーランドが生んだ天才ショパンの傑作を演奏するという内容でした。曲目は「アンダンテ・スピアナートと華麗な大ポロネーズ 作品22」「マズルカ ハ短調 作品56 第3」「ピアノ・ソナタ第3番 ロ短調 作品58」。もう、演奏は言葉が出ないほどに感激しました。

今年の1月30日に収録したようですが、使用したホールがまた素晴らしいものでした。2015年12月にオープンした立川市幸町のCHABOHIBA HALLというところです。調べてみましたら、100席ほどの小さなホールらしいです。かつて養蚕を営んでいた大きな家屋と付随する広い庭がこの地にあり、この邸宅の庭にあった樹齢130年を越えるチャボヒバの木がそのままの姿でホールを見守っているそうです。そしてこの樹がホールの名前の由来になっているようです。映像だけですが、本当にいいホールって感じがします。

そして、今回のリサイタルで反田恭平さんが使用したピアノがイタリアのFAZIOLI (ファツィオリ)。反田さんのテクニックとショパン作品の解釈が卓越していることは言うまでもありませんが、聴こえてくるピアノの響きが異次元というか鳥肌が立つくらいに素晴らしいものでした。
ピアノを専門にされている方には馴染みがあると思いますが、私は先月NHK-BS1で放送された『もうひとつのショパンコンクール』を見て初めてこのピアノのことを知りました。1981年創業とありますから、まだ40年にも満たないピアノメーカーなのですね。
番組の受け流しですが、前回2015年のショパンコンクール本戦前の5日間の練習期間、ステージには4台のピアノが置かれていました。出場するコンテスタント(78名)は自由にピアノを試し弾きして自分が使うピアノを選ぶことができるのです。4台のピアノは、STEINWAY & SONS、YAMAHA、KAWAI(Shigeru Kawai)、FAZIOLI でした。日本のメーカーが2社も入っているというのも凄いですね。

特に番組の中で丁寧に描かれていたのが、FAZIOLI社のただ一人の調律師である越智晃(おちあきら)という日本人でした。創業者のFazioli氏からも「100万人に一人の耳を持つ天才」と認められ男です。社運をかけ、そしてショパンコンクールを陰から支える調律師たちの奮闘は想像を絶するほどに凄まじいものがありました。ただ、ファイナルでFAZIOLIを選択したコンテスタントはおらず、予選でただ一人使用した中国人の女性ピアニストのティアン・ルーも1次予選で敗退します。
ちなみにファイナリスト10名が使用したピアノは、STEINWAY 5名、YAMAHA 5名という互角の戦いでした。そして20日にもおよぶ壮絶な戦いを勝ち抜いてfirst prize, gold medalistとなったのは韓国のチョ・ソンジン(Seong-Jin Cho)でした。彼が選択したピアノはSTEINWAY、残念ながらYAMAHAはメーカーとしての悲願をまたしても達成することは叶いませんでした。

次回のショパンコンクールは来年2020年に開催されますが、どのような新たなドラマが生まれるのでしょうね。そしてFAZIOLIからも目が離せません。
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※写真はすべてBSプレミアム『クラシック倶楽部』の放映画面を撮影したものです。