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桜木紫乃の『光まで5分』を読了です。

舞台はいつもの北海道から沖縄へと流れます。いかがわしい風俗店で働きながら生きている主人公のツキヨと彼女が出会ういわくつきの人たちとの束の間の物語です。抜けるような青空と紺碧の海がウリの沖縄、観光客などで賑わう国際通りから一歩路地へ入るとそこはツキヨたちが男を迎える「竜宮城」。生きることに対する女の強(したた)かさ、そして同じような境遇を抱えつつも甘さや弱さの目立つ男たち、色や熱気にあふれている表舞台(メインストリート)とそこから一歩退いた路地裏。すべてが大人のお伽話のようです。
ドンツキ(突き当り)まで流れ着いたツキヨとヒロキそして万次郎。心優しい彼らが暗闇のなかで見出したひと時の安らぎが愛おしいです。光を求めてよろよろと歩く彼らに、「光まであと5分だから頑張って」と声をかけたくなります。

纏わりつくようなどんよりとした暗さを描かせたら桜木さんは上手いですね。
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