カテゴリ:
堂場瞬一の『ピーク』を読み終えました。

主人公は40歳になる新聞記者の永尾。17年前、入社一年目にプロ野球賭博の特ダネをつかみ、この記事で新聞協会賞を受けて社内でも一躍脚光を浴びる存在でした。しかし、その後は目立った記事にも恵まれず、「一発屋」を自認する日々を送っています。
そして、17年前の同じ頃、永尾の記事によって球界から永久追放されたのがルーキーの竹藤という男でした。彼も高校球界では甲子園を沸かせ、鳴り物入りでプロ野球界に入って、一年目にして投手部門の主だったタイトルはすべて獲得したスター中のスターでした。
そんな若い時に「ピーク」を迎えてしまった二人の男が、ある殺人事件に絡んで再び表舞台に登場することになります。

私たち一般庶民でも人生においては山あり谷ありと思いますが、マスコミをにぎわすような人たちはその振幅の度合いが桁違いに大きいことが想像できます。特に近年のスポーツ界では10代のアスリートが大活躍しており、種目によっては20代に入るとトップアスリートとしては成り立って行かないことも多く見受けるようになってきています。ピークを過ぎてもアマチュアスポーツ界の人たちはあまり心配がないのかも知れませんが、野球やサッカー、バスケットなどプロスポーツの世界では指導者や解説者にスライドする一部の人を除いてより過酷な状況と言えます。
人生100歳時代にその1/3ほどのところでピークを迎えるというのはどういう感覚なのでしょう。一握りの成功者はいいとしても、それ以外の大多数の人達のその後の人生はどうなっちゃうのかなと思ったりします。

物語のほうは、「野球ブローカー」というのがキーワードになって話が進んでいきます。高校野球の世界では、関西や首都圏から野球留学と称して地方の高校のチームへ入部するのは普通になりましたもね。全国を行脚してこれぞと思う中学生を発掘して、有力高校へ斡旋するのを生業にしているらしく、もちろん多額のお金も動くようです。小説ですから実態はよく分かりませんが、裏でこのようなことが行われているのであれば、高校野球の魅力も半減ですね。
P3300007