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村山由佳の『まつらひ』。面白かったです。

まずもって、「まつらふ」とは祭の語源であり、「奉る・祀る」の未然形に助動詞「ふ」がついた形らしいですね。神様の力に従い奉仕するという意味があるようです。

そんなことで日本各地の6つのお祭りに絡めて様々な人たちの人間模様を描いています。それぞれの町の風情や季節の移ろい、お祭りの喧騒や儚さまでもが伝わってくるようです。誰もが幼いころからお祭りに慣れ親しみ思い出も多いことと思うのですが、お祭りという非日常が不思議と私たちの感情を揺り動かすのは間違いないようです。幻想的だったり、どことなく淫靡(いんび)に感じるのは、少なからず人間としての本性が刺激されるからなのかも知れません。そんな祭りの昂揚感と心の奥に秘する情欲との交わりが、6つの短いお話の中に見事に収斂(しゅうれん)されて描かれています。
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