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今村昌弘の『魔眼の匣の殺人』。久々に星5つを差し上げても良いと思える作品でした。
鮎川哲也賞や本格ミステリ大賞を受賞した前作の『屍人荘(しじんそう)の殺人』も最高に面白い作品でしたが、今作はそれ以上の面白さでした。

物語は前作に続いて大学2回生の剣崎比留子が名探偵宜しく1年後輩の葉村譲と共に事件の謎に挑みます。
舞台は、人里離れた「W県I郡旧真雁(まがん)地区」。そこにはかつて斑目機関という超能力研究所があり、敷地内に「魔眼の匣」と呼ばれる巨大な建物が現存していて、現在は予言者のサキミという老女がお世話をする神服(はっとり)という女性と一緒に暮らしています。サキミが「11月最後の2日間に、真雁で男女が2人ずつ、4人死ぬ」と予言したこともあって、住人は恐れおののいてその土地を離れて集落は人っ子一人いない状態にあります。そんな真雁に目的があったり、偶然に立ち寄ったりした剣崎と葉村ら9人を含め11人が「魔眼の匣」に取り残されることになります。それは「魔眼の匣」と外部を繋ぐ唯一の橋が燃え落ちたことに起因し、それを切っ掛けにいよいよミステリーの幕が下ろされることになります。そして予言通りに次々と凄惨な事故や事件が起きていくのです。
俗にいうミステリーの王道・クローズドサークルものなのですが、予言や予知能力といったホラーやSFで扱われるような題材を組みこんでいたり、アガサ・クリスティの小説を思わせる仕掛けがあったりと驚くような謎解きが満載になっています。
ネタバレをしますと叱られそうですので、この続きはぜひ読んでみてください。

狭い空間の中で予言に翻弄される人間の心の弱さ。そしてお互いに疑心暗鬼になる人間の心理。ミステリーとしても一級の面白さがありますが、人間の心の駆け引きこそ、この作品の面白さなのかもしれません。第3作目も期待したいですね。
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