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中山七里の『死にゆく者の祈り』も面白かったです。

主人公は獄中の人たちに仏道を解く教誨師という務めをしている顕真という浄土真宗のお坊さんです。ある日のこと、大勢の囚人を集めての集団教誨の際に一人の死刑囚が目に留まります。それは大学時代に所属していた登山部で一緒だった関根という男でした。二人は冬山で大きな遭難事故に遭ったことがあるのですが、その際に怪我をした顕真を救出してくれたのが関根だったのです。大学卒業後は別々の道を歩んだこともあり音信不通でしたが、顕真にとっては命の恩人で無二の親友であったことは言うまでもありません。

関根の罪状は、深夜の公園で見ず知らずのカップルを殺害したというもので、人格者として知られていた友の犯行を顕真は信じることが出来ませんでした。教誨師という務めの範疇を逸脱しつつも、命の恩人である友を救いたいという一心で冤罪を証明するために奔走するのです。事件捜査を担当した所轄の刑事、弁護士などの協力者も現れ、裁判記録に残る不可解な証言や事実を少しずつ掘り返していきます。死刑執行というタイムリミットが迫る中、息詰まるような攻防が繰り広げられますが、死刑執行というまさにその時になってドラマチックなどんでん返しが待っているのです。

心が揺さぶられるような中山七里さんのミステリー。おすすめの一冊です。
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