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日本ピアノ調律師協会のカレンダーの6月は、古いグランドピアノでした。

このピアノを製作したコンラート・グラーフ(Conrad Graf 1782-1851)は、19世紀のウィーンを代表するピアノ製作者のひとりです。1824年に宮廷ピアノ製作者の称号を取得し、1835年の第1回ウィーン工業見本市のピアノ部門で金賞を受賞するほどの腕前でした。時代は同業製作者の多くが金属の支柱をフレームに組み込む方向に向かっていましたが、彼は伝統の音色を守るため1840年まで木製フレームにこだわり続けたことでも知られています。
シューベルトは幼少期からグラーフのピアノを愛用していましたし、難聴の進んだ晩年のベートーヴェンも使っていたといいます。また、シューマン夫妻はグラーフからピアノを贈られていますし、ショパンも1829年のウィーンでのデビューリサイタルにグラーフのピアノで演奏して成功を収めたそうです。
2020-06