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角田光代の『坂の途中の家』をやっと読み終えました。
主人公が刑事裁判の補充裁判員に選ばれることから物語が始まります。担当事案は30代の母親が生後8ヶ月の幼女を浴槽に落として死なせ殺人罪に問われるという事件です。法廷での証言に触れるにつれ、主人公は3歳になる娘がいる自分自身のことを被告人にオーバーラップしていきます。
読み進めるうちに、いつしか読者も法廷に身を置いて当事者になっているような気持ちにさせられます。相当の読み疲れ感が残ってしまうほどに、作者の心理描写は細かく鋭いです。心の闇に迫る作者の筆の力に引き込まれてしまった一冊です。
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