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塩野七生の古代ギリシア・シリーズの第一巻『民主政のはじまり』は、一つの歴史物語としてはとても面白くて一気読みでした。個人的に古代ギリシア史に興味があって、古典期と呼ばれる紀元前4、5世紀頃のポリス(市民共同体)の成り立ち、とりわけ「フラトリア(兄弟団)」と呼ばれる市民集団に注目して学位論文を書いたことがあります。そんなこともあって、この全3巻のシリーズの発刊を待ち望んでいました。

塩野さんが本書を書くきっかけの一つとして、代議制民主主義の危機が盛んに指摘されるようになり、ここはじっくりと古代ギリシアの民主政の実相を探ろうという心づもりがあったようです。アテネで民主政がはじまった由来や民主政ができるまでのプロセス、体制の維持などについても面白く分かりやすく書いています。
そして、物語の大半を占めるのが、もう一つのテーマのペルシア戦役です。兵士の数や物流で圧倒するペルシアに対して、質で対抗し3度とも勝利するギリシア連合軍とそれを指揮するテミストクレスにスポットライトを当てています。(本の表紙もテミストクレス) 彼の天才的な采配は、大河ドラマ「真田丸」の上田城での攻防を観ているようで、戦記物語としても痛快ですし、2500年という時間の経過を忘れるほどに鮮明にシーンが浮かび上がってきます。塩野さんの描写の上手さはさすがというしかありません。掛け値なしに面白い一冊です。

私の予想では、第二巻は名実を兼ね備えた民主政の実現に向けて指導力を発揮したペリクレス、そして第三巻は北方のマケドニア王国に誕生したあのアレクサンドロスと思うのですが、塩野さんは誰にスポットライトを当てるのでしょうね。年末に発刊予定の第二巻を楽しみに待ちたいと思います。
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