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宇江佐真理さんの『うめ婆行状記』を読み終えました。昨年11月に66歳で亡くなる直前まで執筆して、朝日新聞に連載されていた小説を単行本化したものです。江戸人情ものを書き続けた作家の未完の遺作になります。物語は大店の一人娘として育ち、町方の役人の家に嫁いだ「うめ」が、夫を亡くしたことを切っ掛けに五十路を目の前にして独り暮らしを始めることから始まります。歌舞伎の世話ものを観ているようで、笑いあり涙ありの江戸下町の情景が浮かんできます。
読んでみますと、主人公の「うめ」は、宇江佐さんご自身なのではという気がしてきます。そして宇江佐文学の背景になっている江戸下町は、宇江佐さんご自身が過ごされた昭和30年代の函館がベースになっているようにも思えてきます。懐かしい昭和の函館の街並み、そして日々の暮らしの一コマ一コマが「うめ婆」を取り巻く人々の人情味あふれる物語とオーバーラップして蘇ってきます。宇江佐さんと同時代に函館で生まれ育った者として、そんな気がして読んでいました。いい本でした。
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