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カテゴリ:ちょっと面白かった本

『希望荘』 宮部みゆき

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杉村三郎シリーズ第4弾となる『希望荘』も面白かったです。
前作で離婚し仕事も失った杉村三郎、故郷の山梨に戻るのですが、ある事件をきっかけにして東京で探偵事務所を開業することになります。そんな杉村のところへ舞い込む4つの事件からなる短編ですが、いずれも日常生活のちょっとした心の裂け目から罪という罠に落ち込む人々の心理を描いています。人間の心の奥底にある闇の部分にまで踏み込んで鋭くえぐる宮部さんの筆の力はさすがですね。読んでいますと少しやるせない気もしますが、江戸物を思わせる人情味豊かな人々に囲まれて暮らす杉村の誠実で明るい姿が救いとなっています。
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『東京會舘とわたし 下(新館)』 辻村深月

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辻村深月の『東京會舘とわたし』の上巻に続く「新館」をモチーフにした小説です。こちらも全5編の連作短編集となっています。
第6章『金環のお祝い/昭和51年1月』から物語が始まるのですが、このお話はとてもいいです。ジーンときて最初から泣かされてしまいました。次の第7章『星と虎の夕べ/昭和52年12月』の越路吹雪と彼女のマネージャーだった岩谷時子のお話も、越路の知られざる一面をうかがわせて良かったです。第8章『あの日の一夜に寄せて/平成23年3月』は実際に東京會舘へ寄せられた手紙をもとに東日本大震災の際の出来事を物語にしたもので、不安な一夜を過ごす中でのクッキングスクールに纏わるお話が感動的です。第9章『煉瓦の壁を背に/平成24年7月』では著者の体験をベースにしつつ東京會舘へ寄せる想いが凄く伝わってきて、これも素敵でした。そして第10章『また会う春まで/平成27年1月』、大正11年の創業から93年目にして2度目の建て替えを控え、最後の営業日の結婚披露宴の模様を綴ったものですが、これもホロリとさせられるいいお話です。
上下巻合わせて10の短編、いずれも東京會舘のスタッフの方々の繊細で心に染み入るようなホスピタリティが随処にちりばめられていて、本当のプロフェッショナルの「おもてなし」って凄いなと思って読んでいました。
平成30年の春には新しい東京會舘がお目見えするようですので、完成したら行ってみたいと思っています。
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『東京會舘とわたし 上(旧館)』 辻村深月

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辻村深月の『東京會舘とわたし 上(旧館)』は面白かったです。
丸の内の皇居お濠に面した東京會舘を舞台にした連作短編集です。創業の大正12年から関東大震災、戦中、戦後を経て昭和39年の東京五輪までの激動の時代を生きる人々とそれを暖かく見守る東京會舘を描いています。
内容は読んでいただければと思いますが、私が個人的に印象に残ったのは、第1章の「クライスラーの演奏会/大正12年」では、クライスラーが弾いたベートーヴェンのクロイツェルソナタを、第2章の「最後のお客様/昭和15年」はレストラン・プルニエの「舌平目魚の洋酒蒸」のことかな。第3章の「灯火管制の下で/昭和19年」では遠藤波津子理容館のこと、第4章「グッドモーニング、フィズ/昭和24年」は"アメリカン・クラブ・トーキョー"の「モーニング・フィズ」、第5章「しあわせな味の記憶/昭和39年」は、ガトーアナナとプティフールでしょうね。うふふ、音楽や食べものばかりに目が行ってますが、本当のところはこれに纏わる登場人物がとても魅力的な人達ばかりで、こちらが物語の本筋です。
東京會舘は前を通っただけで中へは入ったことがありませんので、こんど行った時にはレストランで美味しいものを食べてみたいと思っています。そうそう、雰囲気も味わってこなくては。
『東京會舘とわたし 下(新館)』は、昭和51年から始まって、現在までとなっています。今読み始めたところです。
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『危険なビーナス』 東野圭吾

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東野圭吾の『危険なビーナス』、面白くて一気に読んでしまいました。
詳しいことを書いちゃうとネタバレになってしまいますので、あえて伏せておきますが、さすがに理系に強い作者ならではの科学的根拠に基づいた内容とスピード感のある物語の進め方にはいつもながら魅力を感じてしまいます。「危険なビーナス」という意味が最後になって分かりますよ。
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『海の見える理髪店』 荻原浩

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今年の第155回直木賞を受賞した荻原浩の『海の見える理髪店』。
父と息子、母と娘、夫と妻などそれぞれの家族の日々を描いた6つの短編からなっています。モチーフはそれぞれ異なっていますが、どこにでもいそうな普通の家族に起こる奇跡のようなお話です。思い通りにならないのが人生なのでしょうが、思い出したくもない過去の出来事や別れ・喪失、そしてそれに対する後悔と切なさが綴られた物語です。ただ、いずれの短編も最後に微かな明日への希望が灯されています。作者が寄せる家族の絆への思いなのでしょう。
「海の見える理髪店」と「成人式」の短編が特に良かったです。ぜひ読んでみてください。
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『津軽双花』 葉室麟

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葉室麟の『津軽双花』、これも面白かったです。
津軽藩二代藩主・信枚(のぶひら)公に嫁いだ二人の姫、辰姫と満天(まて)姫、そして辰姫の実兄の杉山源吾の三人が幕藩体制初期の津軽藩の難しい時世を手を携えて乗り越えてゆくという物語です。辰姫は豊臣秀吉の正室(高台院)の養女であり石田三成の実娘です。満天姫は徳川家康の姪に当たる方で、家康の養女になっています。
天下分け目の関ケ原の戦いから13年、勝者と敗者として異なる立場に置かれた二人の女性が、津軽を舞台に不思議な友情で結ばれつつもそれぞれの威信をかけた生き方を貫きます。時代に翻弄された二人の姫の美しくも凛とした生きざまが感動を呼びます。

弘前市茂森町の禅林街の名刹・長勝寺には信枚公と満天姫のお墓があり、新寺町の貞昌寺には辰姫のお墓があるそうです。新寺町には住んでいたことがありますが、貞昌寺の辰姫のことは知りませんでしたので、いつか行ってみたいなと思っています。
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『大沼ワルツ』 谷村志穂

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谷村志穂さんの『大沼ワルツ』、泣けるほど感動して一気読みです。
大沼を開拓した倉島家の三兄弟のもとに山梨の三姉妹がそれぞれ嫁ぎ、厳しい北海道の自然と向かい合いながらも、ひとつ屋根の下で愛し合い励まし合いながら逞しく生きていく素敵な物語です。

子供の頃の大沼は函館からは結構遠いところというイメージで、私などはせいぜい学校の遠足で行く程度でしたが、髭面のオジサンが黙々と木彫りをしているお土産屋さんの店先で子熊の「ゆうじろう」が観光客に愛嬌を振りまいていた光景などを鮮明に思い出すことが出来ます。兄弟姉妹がたくさんで賑やかだった我が家、白黒テレビや手回し絞り機が付いた洗濯機などが入ってきたりして大騒ぎしたことなどを小説を読みつつ思い出してホロリとしてしまいました。

昭和ノスタルジーいっぱいの頃の大沼、そして倉島三夫婦とお姑の那須子さん、いいなあ。
「事実は小説より奇なり」といいますが、信じられないような実話をもとにした小説です。ぜひ読んでいただきたい一冊です。
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『辛夷の花』 葉室麟

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葉室麟の『辛夷(こぶし)の花』、やっと読み終えました。
 「抜かずの半五郎」と揶揄される剣の達人・小暮半五郎と、隣に住む勘定奉行を務める澤井家の娘・志桜里(しおり)とのもどかしくも切ない愛を縦軸に、藩の中枢でうごめく家老たちとの主導権争いを横軸にして物語は進んでいきます。
「自らの心のままに生きたい」と願いながらも武士の本分を貫く半五郎と、「お家第一」という武家の娘としての責務を全うしようとする志桜里。葉室作品を貫くメッセージは、このような志の強さと美しさにあるのですね。
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『うめ婆行状記』 宇江佐真理

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宇江佐真理さんの『うめ婆行状記』を読み終えました。昨年11月に66歳で亡くなる直前まで執筆して、朝日新聞に連載されていた小説を単行本化したものです。江戸人情ものを書き続けた作家の未完の遺作になります。物語は大店の一人娘として育ち、町方の役人の家に嫁いだ「うめ」が、夫を亡くしたことを切っ掛けに五十路を目の前にして独り暮らしを始めることから始まります。歌舞伎の世話ものを観ているようで、笑いあり涙ありの江戸下町の情景が浮かんできます。
読んでみますと、主人公の「うめ」は、宇江佐さんご自身なのではという気がしてきます。そして宇江佐文学の背景になっている江戸下町は、宇江佐さんご自身が過ごされた昭和30年代の函館がベースになっているようにも思えてきます。懐かしい昭和の函館の街並み、そして日々の暮らしの一コマ一コマが「うめ婆」を取り巻く人々の人情味あふれる物語とオーバーラップして蘇ってきます。宇江佐さんと同時代に函館で生まれ育った者として、そんな気がして読んでいました。いい本でした。
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『誓約』 薬丸岳

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図書室で本を探していたら、担当のeさんが「この本読みました・・・」と勧めてくれたのが、この本でした。eさんは顔なじみで、いつも面白い本をセレクトしてくださいます。(^^♪
薬丸岳の『誓約』、長編ミステリーで最後までハラハラして面白かったです。
物語は、愛する妻や娘と幸せに暮らす男の元に届いた「あの男たちは刑務所から出ています」という手紙を受け取ったところから始まります。タイトルの『誓約』とは、主人公のこの男が16年前にある女性と交わした約束のことです。約束ですから守らないといけないのですが、それが出所した男二人を殺すというものだとしたら・・・。最後までこの主人公の男を脅している犯人が誰なのか分からず、そして結末は思いもよらない意外な展開になります。
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『ツバキ文具店』 小川糸

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これほどまでに品のある文章を書かれる小川糸さんってどんな方なのでしょう。『ツバキ文具店』、久々に素敵な本に巡り会えました。
鎌倉にある小さな文具店で代筆屋としてさまざまな依頼を受けているポッポちゃんこと鳩子が主人公です。彼女に持ちかけられる代書の仕事から垣間見える人間模様が、夏から春へと季節をひとめぐりする鎌倉の四季を背景に、あたかも水彩画の画集を捲るようにしっとりと綴られています。
ぜひ読んでみていただきたい一冊です。
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「うちのご近所さん」 群ようこ

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「かもめ食堂」も「れんげ荘」シリーズも読んでいませんが、群ようこの「うちのご近所さん」を読んでみたいと思っていました。うふふ・・・、この手の本は大好きですから、頷きながら大笑いしながら一気に読んでしまいました。
忙しさにかまけて、あまり人間を深く観察したことはありませんが、あえて類型化しつつ眺めてみるとこれほど面白い生き物はいないということらしいです。私もこの本に出てくる「ご近所さん」の誰かと一緒でチョロチョロしているのは間違いありませんね。とにかく面白い一冊です。
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『サブマリン』 伊坂幸太郎

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 伊坂幸太郎の『サブマリン』を読み終えました。
家裁調査官の陣内と武藤という男が登場する『チルドレン』という小説の続編のようです。前作を読んでいませんが、家裁調査官が、問題を起こした少年達と出会い、更生の過程で共に考え悩むといったお話しです。少年犯罪、贖罪という難しいテーマを取り上げていますが、調査官・陣内のキャラクターがとてもユニークで人間味があり、重くなりがちなストーリーに清涼感というか明るさを与えています。
世の中にはいろいろな少年事件が起きていますが、更生を支える陣内のような人物がいると思うと救われるような気持になりますね。
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『永い言い訳』 西川美和

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西川美和の『永い言い訳』、映画化され今年の秋に上映されるということですので、その前に原作を読んでみたいと思っていました。そして昨日読み終えることが出来ました。
西川さんの作品は初めてでしたが、一つひとつの言葉が丁寧で、気品のある流れるような文章が印象的な一冊でした。
物語は、主人公である人気作家の津村が妻の死をきっかけに、彼の心の中に欠落していたある大きな感情に気付くことから始まります。亡き妻の友人家族と交わるなかから、自らの居場所を見つけ癒されていきますが、「永い言い訳」という妻への釈明から解き放されることはありません。
読み進めていくうちに、大多数の読者は自らの心の中に「主人公の津村」を投影するというか見出すのではと思えてきます。そんな私もそのなかの一人で、思わず感情移入してしまいました。なかなかいい本です。

映画では本木雅弘さんが主人公の津村を演じるようですが、映画も面白そうですね。
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『ギリシア人の物語 I 民主政のはじまり』 塩野七生

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塩野七生の古代ギリシア・シリーズの第一巻『民主政のはじまり』は、一つの歴史物語としてはとても面白くて一気読みでした。個人的に古代ギリシア史に興味があって、古典期と呼ばれる紀元前4、5世紀頃のポリス(市民共同体)の成り立ち、とりわけ「フラトリア(兄弟団)」と呼ばれる市民集団に注目して学位論文を書いたことがあります。そんなこともあって、この全3巻のシリーズの発刊を待ち望んでいました。

塩野さんが本書を書くきっかけの一つとして、代議制民主主義の危機が盛んに指摘されるようになり、ここはじっくりと古代ギリシアの民主政の実相を探ろうという心づもりがあったようです。アテネで民主政がはじまった由来や民主政ができるまでのプロセス、体制の維持などについても面白く分かりやすく書いています。
そして、物語の大半を占めるのが、もう一つのテーマのペルシア戦役です。兵士の数や物流で圧倒するペルシアに対して、質で対抗し3度とも勝利するギリシア連合軍とそれを指揮するテミストクレスにスポットライトを当てています。(本の表紙もテミストクレス) 彼の天才的な采配は、大河ドラマ「真田丸」の上田城での攻防を観ているようで、戦記物語としても痛快ですし、2500年という時間の経過を忘れるほどに鮮明にシーンが浮かび上がってきます。塩野さんの描写の上手さはさすがというしかありません。掛け値なしに面白い一冊です。

私の予想では、第二巻は名実を兼ね備えた民主政の実現に向けて指導力を発揮したペリクレス、そして第三巻は北方のマケドニア王国に誕生したあのアレクサンドロスと思うのですが、塩野さんは誰にスポットライトを当てるのでしょうね。年末に発刊予定の第二巻を楽しみに待ちたいと思います。
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『ガラパゴス』 相場英雄

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相場英雄の『ガラパゴス』、上下巻で600頁ありますが、一気に読んでしまいました。
沖縄出身の派遣労働者が身元不明の自殺者として見せかけられた偽装殺人事件の捜査を縦軸に、今や就労人口の4割近くを占める派遣など非正規労働者の実態と、彼らが働く日本の家電メーカーや自動車メーカーの問題などを横軸にして物語は進んでいきます。
携帯電話などを含め日本の家電製品のガラパゴス化の末路、とりわけS社の台湾企業による買収などはニュースで大きく取り上げられていますが、日本の自動車メーカーの誇るハイブリッド・カーなどでも同様の現象が起きていることを本書は暴いています。世界の潮流に乗り遅れ、とっくに競争力を失っている大企業救済のため、「エコカー減税」などといった付け焼刃的な景気対策を進める政府の施策などにも目を向けていきます。これらの様々な元凶が複雑に重なり合って負のスパイラルに陥っている様子が、厳しい雇用環境を絡めて生々しく描写されています。
フィクションとはいえ、迫力があって読み応えのある小説でした。P4100002_1

『異類婚姻譚』 本谷有希子

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劇作家、女優などとして活躍されている本谷有希子の『異類婚姻譚』を読み終えました。第154回の芥川賞の受賞作です。Wikipediaによれば、異類婚姻譚とは鶴女房( 鶴の恩返し)のように人間と違った種類の存在と人間とが結婚する説話の総称をいうのだそうです。
物語は、夫婦が長年連れ添うと顔が似てくるという前述のような説をモチーフにしています。もとは他人であった夫婦という存在が、兄弟姉妹など血族以上に同化していく過程の不思議さや、自己と他者としての境界を問うているのかなと思って読んでいました。
『ちょっと面白い本』のカテゴリーに入れたものの、芥川賞受賞作にしては読み応えがないというか、肌に合わないというか、この手の作品はあまり好きになれそうにありません。
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『羊と鋼の森』 宮下奈都

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宮下奈都の『羊と鋼の森』は一気に読んでしまいました。
流れるような文体というか、一つ一つの言葉が綺麗で、そのことにまず惹きつけられる小説です。ピアノの調律に魅せられた一人の青年が、調律師として、そして人として成長する姿を静かに温かく描いています。作者の宮下さんの自宅のピアノを調律した方が「このピアノにはいい羊がいるね」と言ったことがこの小説を書くきっかけだったそうです。「羊」はハンマーのフェルト、「鋼」はピアノ線、そして「森」は林立するチューニングピンか響板を含めたスプルース(松)のことを表現しているのかなと思って読んでいました。
直木賞の候補作となったほか、「本屋大賞」にもノミネートされていますし、紀伊國屋書店のスタッフが薦める本の1位にも先日なったそうです。
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『Aではない君と』 薬丸岳

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薬丸岳の『Aではない君と』をやっと読み終えました。
重大な少年犯罪を起こした加害者の父親の目線で描かれた作品で、重いテーマゆえに加害者、被害者の立場からいろいろなことを想起しながら読み進めました。子供の事を顧みなかった過去を反省する加害少年の両親、そして親の心痛をおもんばかり取り調べに口を閉ざす加害少年の審判過程がつぶさに綴られ物語は進行していきます。戸惑い苦しみながら前に進んで家族の姿が印象的です。
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『坂の途中の家』 角田光代

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角田光代の『坂の途中の家』をやっと読み終えました。
主人公が刑事裁判の補充裁判員に選ばれることから物語が始まります。担当事案は30代の母親が生後8ヶ月の幼女を浴槽に落として死なせ殺人罪に問われるという事件です。法廷での証言に触れるにつれ、主人公は3歳になる娘がいる自分自身のことを被告人にオーバーラップしていきます。
読み進めるうちに、いつしか読者も法廷に身を置いて当事者になっているような気持ちにさせられます。相当の読み疲れ感が残ってしまうほどに、作者の心理描写は細かく鋭いです。心の闇に迫る作者の筆の力に引き込まれてしまった一冊です。
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『はだれ雪』 葉室麟

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元禄14年3月14日、江戸城松之廊下にて赤穂藩藩主浅野内匠頭長矩による刃傷事件に端を発し、浅野内匠頭の切腹、そして翌年12月14日の赤穂浪士47人による吉良上野介邸討ち入りという一連の事件を取り上げたいわゆる「忠臣蔵」。これほどまでに多くの日本人に愛されて歌舞伎、映画、小説などに取り上げられた出来事は「忠臣蔵」をおいてないように思います。本書は史実に基づきつつ脚色を加えたものと思いますが、新しい「忠臣蔵」の世界を描写しているといっても過言でない作品と思います。時代背景そして難しい出来事に巻き込まれながらも、人として正しく生きることの大切さ、愛するものを守ることの大切さを描いています。いつもながらストーリーが面白いですが、葉室麟の流麗な文章に惹きつけられます。それにしましても赤穂浪士とりわけ大石内蔵助、堀部安兵衛など恰好いいですね。
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『生還者』 下村敦史

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下村敦史の『生還者』、面白くて一気に読み終えました。
世界第3位の標高を誇るヒマラヤ山脈のカンチェンジュンガで大規模な雪崩が発生し、日本人登山者7名が巻き込まれるという惨事から物語は始まります。生存者は絶望視されていたものの、二人の男性が奇跡的に救出されます。しかし、山中での登山隊の行動、雪崩発生時の状況など二人の証言は真っ向から対立するものでした。二人の生還者のどちらが真実を語っているのか、最後まで息をのむような展開で物語は進んでいきます。山登りが趣味でない方でも楽しめる山岳ミステリーです。
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『あの人が同窓会に来ない理由』 はらだみずき

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はらだみずきの『あの人が同窓会に来ない理由』は、一気に読んでしまいました。
40歳を目前にした男女が幹事として中学の同窓会を企画することから物語が始まります。同窓会代行業の女性を交えて参加者を増やすことに知恵を絞り奔走するのですが、所在不明者や欠席者が続出し作業は難航します。かつてのクラスメイトそれぞれの過去と現在を織り交ぜ、思い通りにならない人生模様を描いたちょっぴりミステリータッチの小説です。

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『終の日までの』 森浩美

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森浩美の『終の日までの』を読み終えました。
今生きているこの日常の延長線上に置かれた人生の別れをごく普通の出来事のように描いた8つのお話で構成されています。心が温かくなる話、心に沁みる話、しみじみとする話、泣ける話などを、暗くならずちょっとコミカルに描いた短編集です。最後のお話の『三塁コーチャーは腕をまわせ』が一番良かったかな。

そうそう、巻末の著者紹介で知ったのですが、森さんは元々作詞家で、荻野目洋子の『Dance Beatは夜明けまで』森川由加里の『SHOW ME』、田原俊彦の『抱きしめてTONIGHT』などのヒット曲の作詞を手掛けていたようです。
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『冬の光』 篠田節子

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篠田節子の『冬の光』を読み終えました。
篠田さんは「老境を目の前にして、自分が歩んできた小市民的な人生に意味を見出せなくなる、実存的な不安のようなものを描きたいと思いました」と仰っていますが、主人公・富岡康宏の独り善がりのロマンチシズムには、同じ時代を同じ小市民的に生きてきた同性のひとりとして、共感することはできませんでした。
物語の半分ほどは、四国八十八ヶ所の霊跡を巡る旅に費やされており、あたかも巡礼に行ったような気分にさせられます。歩くのは好きですが、四国巡礼へ行きたいと思ったことはありませんし、この本を読んだだけで行かなくても充分かなと思ってしまいました。
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『わかれ』 瀬戸内寂聴

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瀬戸内寂聴さんの短編集『わかれ』を読み終えました。90歳を過ぎてなお、書かずにはいられない衝動にかられたという9編の短編で構成されています。親しかった作家や親族、明治期の革命家、連合赤軍の活動家など、生者と死者の垣根を越えて対話をしつつ、いずれも素敵な物語に仕上げています。
なかでも、新聞配達の男性と山中に独居する女性との仄かな触れ合いを描いた「山姥(やまんば)」をご自身は気に入っておられるようですが、私もいいなと思って読んでいました。
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『命の響』 舘野泉

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"左手のピアニスト、生きる勇気をくれる23の言葉"との副題がついてる舘野泉の『命の響』を読み終えました。"左手の"という部分だけがあまりにも有名になり過ぎて、「左手でどのような演奏をするのだろう」という少し興味本位で舘野さんを見ていた部分が私自身にもありましたが、そんなことを遥かに超越しているというか、新たな音楽の可能性や魅力の追究に挑戦している舘野さんの姿を存分に知ることのできる一冊でした。

遥か昔、確か音鑑(労音)主催だったように思うのですが、リサイタルで舘野さんのピアノを聴いたような気がしています。聴いたような気がしているというのは舘野さんに失礼なのですが、正直あまり記憶に残っていないのです。私も若かったですし、新進気鋭の「北欧音楽のスペシャリスト」というパンフレットを見て、リサイタルを聴きに行ったのかもしれません。

それから何十年になるのでしょうか、間近でお見かけした一昨年の清和の丘コンサートでの舘野さん。以前のように颯爽という訳にはいきませんでしたが、左手から紡ぎ出される音は、深く心に沁みわたるものでした。この本を読んでみて、ここまでの道のりでの心の葛藤、すさまじいリハビリの日々などを知り、あの清和の丘コンサートで見せてくれた柔らかい表情のことを私なりに納得することが出来ました。
清和の丘コンサートで弾いてくださったカッチーニのアヴェ・マリア。このブログを書きながらCDで聴いています。あの時の演奏を思い出すと今でも胸が熱くなります。
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厚沢部町での清和の丘コンサートのことも書かれています。
そうそう、一昨年のコンサートの終演の後にトイレに行き、何気なしに気が付いたらお隣に舘野さんがいらっしゃいました。間が悪いことに廃校の古いトイレで、しかも男子用は2つしかないというシチュエーションです。舘野さんがお先に用を足しておられ、私も所定位置に着いた手前出るに出られない状況になってしまいました。軽く会釈をして、まさしく舘野さんと「感動」のツレションです。気の利いた言葉も思い浮かばず、無言のままの時間の長かったこと、忘れることが出来ません。トイレでなければ、何か簡単な言葉を交わして握手くらいはしてくださっと思うと残念でなりませんが、後にも先にも一生の思い出になることは間違いないようです。(^^♪
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『ユートピア』 湊かなえ

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湊かなえの『ユートピア』。美しい海辺の町、鼻崎町を舞台に、それぞれの理想郷を夢見る三人の女性が出会うことから物語が始まります。
ミステリーとしてのストーリーも面白いのですが、女性の細かい心理描写を書かせてはこの作家さんの右に出る人はいないのではと思うほどに鋭いです。何気ない日常に潜む微妙な女の駆け引き、ユートピアという現存しえない理想郷を追い求める女たちの心理戦争小説といっても良いような感じのミステリーです。
結末で、登場人物のひとりが書いた"神様への手紙"という手記に思いもよらない事実が書かれています。常識的に考えて、実行しそうにない人物が考えた策略の凄さに、戦慄をおぼえるというか唖然とします。
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『二度寝で番茶』 木皿泉

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木皿泉の『二度寝で番茶』、かっぱさん(妻鹿さん)と大福さん(和泉さん)ご夫妻の対談集ですが、とにかくいいです。木皿さんの本を読んでいると、人生が楽しくなるというか、捨てたもんではないなぁという気がしてきます。お二人の会話の中にスーッと入っていって三人でお茶を啜りながら他愛のないことを話しているような、そんな雰囲気の対談集です。
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『6粒と半分のお米』 木皿泉

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木皿泉の『6粒と半分のお米』、読み終えると肩の力がすぅーっと抜けるようで心地よかったです。神戸新聞やいろいろな雑誌へ書かれたエッセイや対談、そして文芸誌の解説、書評、映画評と盛りだくさんですが、いずれも先日のテレビドラマ『富士ファミリー』で観たような、ふんわりと暖かい真綿で包まれたような気持になります。

巻末というか終わりに2014年3月に放送されたNHK FMシアター『どこかで家族』の全シナリオが掲載されています。東日本大震災で罹災し離散した家族4人の物語です。母と息子は愛媛へ、父と娘は地元に残って暮らしを立て直そうとします。当初は、一時的に離れるだけのつもりだったのが、日常に追われ元どおりになるきっかけを失ったまま時間だけが過ぎていきます。それから9年後の2020年、東京オリンピックを機に一家は再会を果たします。
オリンピックのバスケットの試合を4人で観戦しているシーン。実際にゲームをしている時に広く感じたコートが外から見ると意外と小さいことに驚きます。
「中にいる人と、外にいる人って、コートのラインが全然違うように見えるんだよね」と言い合う4人、家族もコートと一緒だということに気付きます。「一緒に住むことが家族なんてよぉ、それは外から見てるヤツが言うことでよぉ、中にいるほうは必死で、ラインなんて、どこにあろうが、もうどうだっていいべな」と言って安心します。4人は家族の深い絆を確認して、それぞれの元の日常へと戻っていくというドラマです。どこか寅さんの映画のようで、木皿さんの家族を見る目がいいですね。
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『風かおる』 葉室麟

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葉室麟の『風かおる』を読み終えました。
好きな作家のひとりですから、一気に読んでしまいました。この作家さんの本はちょっとミステリー風で、人間の本質をついているにも拘わらず、ほのぼのとして読後感がいいのが好きな理由なのかも知れません。
あらすじは記しませんが、『些細な嫉妬から流転する人生を哀歓豊かに描く傑作時代小説』と帯に書いてありました。小説の最後のほうで、事件の全貌を話すひとりの男のくだりが、この小説のすべてを語っているようです。
「(誰が悪かったのか)わからないな。今回の件で悪人はひとりもいないようだ。しかし、ひとの心には時として魔が入り込む。魔は毒となってひとを次々に蝕んでいく。その様はまるで疫病のコロリのようだな」と。
面白い時代小説です。
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『人魚の眠る家』 東野圭吾

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東野圭吾の作家デビュー30周年記念作品という『人魚の眠る家』を読み終えました。
あらすじについては他に譲るとして、本書の核心は脳死、臓器移植、延命処置という難しい問題を取り上げたところにあると思われます。

可愛い我が子が脳死状態と宣告されても、高度医療や最新の科学技術を駆使して延命治療を施したいと思うのは親として当たり前の気持ちでしょうし、一方で臓器移植でしか命を継続することが出来ない子を持つ親の切実な気持ちも理解できます。「こんな物語を自分が書いていいのか、今も悩み続けています」と東野さんは語っていますが、それぞれの個人や家族のおかれた状況、宗教観などに帰結するものが大きく、何が適切で何がそうではなのか一概には論ぜられないように思っています。

平成22年7月17日に改正臓器移植法が施行されて6年目を迎えますが、昨年6月末までに15歳未満の子供からの提供で行われた臓器移植は7例(うち6歳未満は3例)にとどまっているそうで、小児のドナー(臓器提供者)およびレシピエント(移植希望者)それぞれの苦悩がいかに深いかを物語っています。

また、脳死という言葉も普通に見聞きしていましたが、これほどまでに深く考えたことはありませんでした。一昔前までは、誰もが共通して抱いていた死(臨終)という概念がありましたが、臓器移植に伴って脳死判定というものが持ち込まれてからは、死そのものの扱いが複雑になったことをあらためて認識させられました。
医学を含めた科学技術の進歩は人類の幸福に繋がっていると信じていますが、同時に生殖医療や高度治療などの選択肢が際限なく増えるということでもあり、それに伴う社会的な問題も否応なしに個人や社会に課せられてくると思っています。
そんなことを考えさせられた一冊です。多くの方にお読みいただきたいと思います。
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『下町ロケット2』 池井戸潤

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池井戸潤の『下町ロケット2』、前作の『下町ロケット』と同様に面白い小説でした。バルセロナにある聖家族贖罪教会(サグラダ・ファミリア)を建築したアントニ・ガウディにちなんだ「ガウディ計画」、教会や建築とはまったく関係のないモチーフですが、今回の新しい計画の命名がまずもって面白いです。細かいネタバレはいたしませんが、とにかく痛快な内容です。悪い奴らは徹底的に悪く、良い人達はどこまでも良くて、最後は正義が勝つという、水戸黄門を見ているような感じです。ここまで正義だとちょっと胡散臭い感じもしますが、まあ読後感がスカッとしますから良しとしましょう。

いつものように佃製作所をはじめとした正義側の仕事に対する考え方には教えられることが多いです。何のために仕事や研究をするのかという問の投げかけは、技術屋の端くれの私などにも通じるもので心して耳を傾けるべきと思いました。ノーベル化学賞に輝いた北里大学の大村智さんも仰っていましたが、どんな仕事も名誉や地位や身に余る金が目的ではなく、世の人々の幸福のために行うという理念を失ってはいけないということなのでしょう。「ガウディ計画」の関係諸氏は、研究者・技術者としてキラキラ輝いていますね。佃製作所、次は何にトライするのでしょう。『下町ロケット3』として続編が出て欲しいです。
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『追いかけるな』 伊集院静

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伊集院静の『追いかけるな』、こちらも図書館から借りてきました。
「本物の大人はそんなことはしない」というサブタイトルに惹かれて読んでみましたが、この本を読んでcotoは本物の大人でないことがよく分かりました。(^^♪
第1章の『追いかけるから負けるんだ』から始まり、『いつかは笑い話に』、『私は黙っていた』そして最終章の『生きるとは失うこと』まで、「そうそう、よく言ってくれた」と共感できることが沢山ありましたが、個人的には買ってまで読むかと言えば微妙です。
ところでマッチこと近藤真彦さんの『ギンギラギンにさりげなく』は、この方の作詞(作詞家名は伊達 歩)らしいですね。今年の紅白歌合戦の白組のトリは、35周年になるこの歌をひっさげたマッチといいますから何と言っていいのか・・・。cotoは、近頃の紅白にはあまり興味はありませんが、トリになったマッチだけは見てもいいかななんて思っているところです。
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『木暮荘物語』 三浦しをん

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三浦しをんの『木暮荘物語』、新刊ではありませんので、読まれた方は沢山おられるでしょうね。cotoは読んでいませんでしたので、図書館の棚で見つけて借りてきました。この手の小説は大好きですから、一気に読んでしまいました。星4つつけてもいいかなと思うほどに面白かったです。

小田急線・世田谷代田駅から徒歩5分、築ウン十年、全6室のぼろアパート・木暮荘の住人4人と彼らを取り巻く人々とが織りなす人生模様を描いた物語です。一見平穏そうに見える木暮荘の日常。しかし、ひとりの人間として生きるがゆえの悩みが、哀しみという形で滲み出てきます。そんな哀しみを救ってくれるのが、ぼろアパートの小暮荘そしてそこに暮らす人々の繋がりでした。

cotoも学生時代はとても貧乏でしたので、家賃3000円のぼろアパートで自炊生活をしていました。仕送りする親も貧乏でしたが、イマドキの「貧困」などとはこれっぽっちも思ったことはありませんから不思議です。部屋の広さは4畳半、玄関と台所とトイレは共同、風呂などは勿論ありません。窓を開ければお寺と墓地が広がっていて、それは壮観な立地環境にありました。確か町名が寺町とか新寺町とか言ったような・・・。
今にも壊れそうなぼろアパート・S荘、部屋数は上下で廊下を挟んで10室くらいあったように記憶しています。私の隣室は、授業に行ったのをあまり見たことがない理学部のH君。座る隙間は勿論のこと、これでもかというくらいにうず高く積み重なったゴミの上に横たわる万年床。布団と畳の間にはキノコが生えているのではといつも思っていました。夜中に酒盛りをするとアパート中が居酒屋と化してしまうくらいに筒抜けの安普請アパートですから、何度迷惑をかけたことか。でも、あまり怒鳴られた記憶がありませんので、ぼろアパートゆえのお互いさま精神がまだあった時代なのかも知れません。汚れた食器をそのままにしていると、朝にはいつも綺麗に洗ってしまっておいてくれていたKおばさんはどうしているかなぁ・・・。
老若男女いろいろなワケアリの住民が暮らしていたS荘が懐かしいです。
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『過ぎ去りし王国の城』 宮部みゆき

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宮部みゆきの『過ぎ去りし王国の城』は、思っていた以上に面白い小説でした。

ちょっとだけネタバレを・・・
物語は、推薦入試が終わり、暇を持て余す中学3年生の真(しん)が、細密な古城のスケッチを拾うことから始まります。不思議なことに、その絵に触れると絵の世界を見れ、さらに自分のアバター(分身)を描くことで絵の中に入り込めることを知ります。絵心のない彼は、絵が得意ながら家庭でも学校でも孤独な生活を送る珠美にアバターを描いてもらい、先に絵の世界に入り込んでいた漫画家アシスタントのパクさんと出会います。3人は、静かで美しいけれど生命の気配がなく、出入りする人間のエネルギーを吸い取って消耗させる絵の世界を次第に不審に思うようになります。
さらに絵の世界の古城の中で発見した少女が、10年前の少女失踪事件と関係していることが少しずつ明らかになってくると、彼らはある決断を迫られます。

物語の中での異世界ファンタジーの要素はそれほど多くはないのですが、彼らが絵の世界に引き込まれるという描写は、現実的なことではありません。ただ、私たちが本や映画の物語という異世界に没入するときの感触に近いものがあり、現実世界においても感覚的に分かるような気がします。物語の中の異世界から影響を受けるということは現実にありますもね。

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『砂の街路図』 佐々木譲

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佐々木譲の『砂の街路図』を読み終えました。
母の四十九日を終えた岩崎俊也。彼の両親が青春時代を過ごした北海道の運河町へ旅立つことから物語はスタートします。20年前、父は家族に内緒でこの町を訪れ、酔って運河に落ち溺死するのですが、その父の死の真相を追うことが旅の目的でした。時代から取り残されたような街並みが広がる運河町を舞台に、父が在籍した大学や所属した漕艇部関係者と接触するうちに、父の隠された過去が暴かれていくことになります。
架空の町が設定ということですが、小樽と函館をミックスしたような感じで、運河町なる街へ実際に足を踏み入れたような気分にさせられるちょっと不思議な雰囲気のミステリーです。

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『流』 東山彰良

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今年の第153回直木賞を受賞した東山彰良の『流』を読み終えました。
同賞選考委員各氏の絶賛の帯紙に惹かれてページをめくったのですが、文章がやや翻訳文的で粗い感じがしたことと、中盤までダラダラとしてスピード感にかけることが最初の印象でした。(東山さんは5歳の時に日本に移り住んだ台湾国籍の方ということを後で知り納得した次第です。)
物語は、蒋介石率いる国民党とともに中国本土から台湾に移り住んできた「外省人」の家族のお話です。東山さん自身を思わせる17歳の秋生という青年が主人公です。祖父を殺した犯人捜しに執念を燃やすのですが、結末は思わぬ展開に発展します。ミステリー仕立てにしつつ、1970年代以降の台湾の猥雑ながらも生き生きとした世相を見事に描いていて、大戦後の台湾、日本そして中国の歴史を再認識することが出来る点からも読む価値があります。

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『あの家に暮らす四人の女』 三浦しをん

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三浦しをんの『あの家に暮らす四人の女』を一気に読み終えました。この手の本は大好きですので、星4つ半いや5つ上げてもいいかなと思っています。「ざんねんな女たちの、現代版『細雪』・・・」というフレーズが帯紙にありましたが、とにかく面白いです。
家主の鶴代、その娘の佐知、佐知と同じ年頃で転がり込んできた雪乃、そして雪乃の会社の後輩・多恵美、それに長らく敷地内の守衛小屋(?)に住む山田という老人。古びた洋館を舞台に繰り広げられる女四人と一人の爺さんの暮らしはお互いの個性が絡み合って、楽しくもあり姦(かしま)しく過ぎていきます。
ドラマ化されても楽しいかなと思っています。鶴代には・・・あの人がいいかな、なんて勝手に配役をキャスティングするのも楽しいです。

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『ラプラスの魔女』 東野圭吾

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東野圭吾の『ラプラスの魔女』を読み終えました。
未来予測をテーマにした作品で、ガリレオシリーズと同様に理系出身の作者らしいSFミステリーです。wikipediaによりますと、「ラプラスの悪魔(魔女)」というのは、『すべての物質のあらゆる力学的状態を知ることができ、かつそれらのデータを解析できるだけの知性があれば、不確実なことは何もなくなり、未来は計算によって予測できる』という理論を提唱した18世紀のフランスの科学者ラプラスの概念に基づいたものなのだそうです。
物語は、脳神経外科の権威である父を持つ羽原円華という少女が、母親と北海道旅行に出かけた際に遭遇した自然災害の場面から始まります。長編にもかかわらず、いろいろな仕掛けが絶妙に絡み合って、ストーリーを複雑に面白くしていきます。東野ファンにはたまらない一冊と言ってよいでしょう。

この小説を読んで、この春に放映されたNHKスペシャル「NEXT WORLD-未来はどこまで予測できるのか-」を思い出しました。舞台は30年後の2045年という設定。人々は超高性能の知能端末を脳内に埋め込んだり身につけて、すべての行動はその人工知能の未来予測に従って生きているというのです。受験勉強などは意味をなさず、人々は間違いを起こさず、超効率的な社会のなかで暮らすらしいのです。高い確率でこのような社会に変貌していくようなのですが、少なくとも私はこんな世界で生きていく自信がありません。うふふ、30年後のNEXT WORLDまで生きていませんね。(^^♪
 
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『リバース』 湊かなえ

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湊かなえの『リバース』を読み終えました。
事務機会社に勤めるしがないサラリーマンの深瀬和久。珈琲を飲むことが唯一の趣味です。大学時代にゼミ仲間での旅行の際、遅れて到着する仲間を迎えに行った広沢由樹が車ごと崖から転落して死亡します。少しだけアルコールが入っていたものの、仲間内では秘密にすることで単独事故ということで処理されますが、数年後、残った仲間たちに匿名の告発文が届きます。告発文を送ったのは誰なのか、その目的は何なのか。深瀬は広沢の中高生時代の過去を遡ることで、手がかりを掴めるのではと考えます。深瀬の大好きな「珈琲」と広沢の実家で採取される「蜂蜜」がキーワードとなって物語は進んでいきます。あまりミステリーらしくありませんが、終章では思わぬどんでん返しが待っています。「リバース」の意味も含めて面白い一冊です。

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『サラバ! (上・下)』 西加奈子

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作家生活10周年で直木賞を受賞した西加奈子の『サラバ!』をやっと読み終えました。
主人公の「僕」こと歩が、長い時間をかけて自分が信じるものを見つけるまでの物語です。上巻は歩と家族の歴史がこと細かく描かれており、個人的には退屈な内容で、何度も読むことを中断してしまいました。それでも何とか数週間をかけて上巻を読み終えて、ページを開いた下巻。こちらはスピーディーな展開でぐいぐい読んでしまいました。
「僕はこの世界に、左足から登場した」という文章で始まる物語。最後まで読むと、この小説は作者の自伝に近い小説だということが分かってきます。そして退屈だった上巻の長い長い圷(あくつ)家の歴史が、下巻での劇的な結末に結びついて行きます。これから読まれる方は、上巻で飽きて放棄せずに下巻まで読み進めてください。(^^♪
装幀の絵も西さんが描いたらしいです。

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『オールド・テロリスト』 村上龍

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村上龍の『オールド・テロリスト』を読み終えました。
社会的な地位や名誉がある11人の老爺が、「いったんリセットしないと、もうこの国はもたない・・・」という已むに已まれぬ思いから独自のネットワークを作って、粛々とテロを計画・実践するといった物語です。オールド・テロリストの主張と行動を描き、そこから現代日本の社会的病理を炙り出そうとした著者の意図が感じられます。連載だったようですから、少し冗長感が否めませんが、時代の空気、社会現象、不可解な事件にいち早く着目し、それらを作品の中に取り込んでいった龍ワールド全開の一冊と言ってよいでしょう。

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「君の膵臓をたべたい」 住野よる

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ちょっとタイトルが怖いのですが、「君の膵臓をたべたい」 住野よる著を読みました。
もう何十年も前の青春時代を思い出すような爽やかで、読み進むにつれ涙なしでは読めない一冊でした。物語は、主人公の『僕』が病院で「共病文庫」と題された1冊の文庫本を拾うことから始まります。敢えてこれ以上の内容は記しませんが、若い「仲良し」の二人がお互いを見つめることから自分を知り、相手を知りそして共に成長していく過程がリズミカルで美しい文章で綴られています。
いま青春真っただ中の若い人、そして遥か昔に青春時代を謳歌した人も共に感動する本だと思います。ぜひ多くの人に読んで欲しい一冊です。いずれテレビドラマや映画になりそうな予感がします。

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「悲嘆の門」 宮部みゆき

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お盆休みはどこへ行っても人がいっぱいですし、庭いじりも暑いので、家に閉じ籠って読書です。
宮部みゆきの「悲嘆の門」を読み終えました。物語自体「英雄の書」の続編らしく、登場キャラクターも物語の世界設定も前書と同様です。個人的にはこのようなファンタジー要素の強い作品はあまり好きではないのですが、純粋な現代劇やミステリーではない宮部作品として、「これはこういうお話だ」という割り切りで読むと結構面白い作品に仕上がっていると思います。

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「森に願いを」 乾ルカ

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北海道出身の作家・乾ルカによる連作短編集です。都会の中にポツンとある深い森、人生に迷いや悩み事を抱え、行き詰まった人を包み込むように迎えいれてくれます。そんな森に惹きつけられた人たちと森番の青年との心温まる物語です。いい本です。特に若い人に読んでほしい本ですね。

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「櫛挽道守」 木内昇

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木内昇の「櫛挽道守(くしひきちもり)」を読み終えました。 
江戸末期の木曽山中の藪原(やぶはら)という宿を舞台に、櫛職人の家に生まれた登瀬という女性の人生を描いた作品です。信州一の名工と呼ばれる父・吾助の櫛挽きの技に幼い頃から魅せられ、父の背を追いつつひたすら櫛挽きの道に励みます。櫛挽きは男の仕事だといわれ、女は結婚して子どもを産むことが幸せだと信じられていた時代、木曽山中の閉鎖された社会に生きる一女性の細やかな心情を通して、人生とは、仕事とは、家族とは・・・それぞれのあり方を丁寧に描いている作品です。

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『九年前の祈り』 小野正嗣

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第152回芥川賞を受賞した小野正嗣の『九年前の祈り』を読み終えました。
大分県の「リアス式海岸が独特の地形を作る海辺の土地」を舞台に、現代文化から取り残されたような小さな集落に生まれ育ち、その中で人生を終えようとしている人々と、彼らと何らかの関わりを持つ人々が、複雑に絡み合いながら物語が進行してゆきます。傍目にはハッピーで毎日がお祭りのような現代社会ですが、「どこの世界に明るいだけの人がおるんか…。そげな人がおったら、そら、ただの馬鹿じゃ」と登場人物が語るように、見えないだけでどこの家庭にも悩み苦しみのたうち回る一面があるのも事実かもしれません。そんな人間の背負った重荷、人間が人間であるがゆえの営みに対する作者の真摯なまなざしが心に響きます。
とても美しい言葉で書かれた小説ですので、外国語とりわけアングロサクソン系の言語に翻訳しても受け入れられるのではと思っています。

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『春の庭』 柴崎友香

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柴崎友香の『春の庭』、一気に読んでしまいました。
終始穏やかで、ふわふわした感じの作品でした。主人公の太郎、そして同じアパートに暮らす女流漫画家の西ともどもアパートの住民同士のやりとりがどこか浮世離れしていてなんとも不思議な感じです。作品の何かを理解するには至りませんでしたが、写真集「春の庭」の舞台となった家を取り巻くアパート住人の何気ない日々の流れに心地よさを感じました。

第151回芥川賞受賞作。選考委員から「街、路地、そして人々の暮らしが匂いをもって立体的に浮かび上がってくる」と絶賛を浴びた作品のようです。

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『マッサンとリタ』 オリーヴ・チェックランド(和気洋子訳)

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先日の竹鶴政孝による自伝『ウィスキーと私』には本人の記憶違いや彼独自の配慮によると思われる記述違いがあるようで、それを補ううえでもこの本を読んでみたいと思っていました。日英交流史家の著者が膨大な資料をもとに竹鶴夫妻や日英のウィスキーに関することを客観的にまとめて記載しており、注釈も読み応えがあって、専門書のような体裁をとっています。朝ドラを見る際の別の楽しみ方としてぜひお読みいただきたい一冊です。

そうそう、春になってもう少し暖かくなったらちょっと車を走らせて余市の蒸留所を訪ねてみたいと思っています。石壁越しに赤い屋根のモルト・ハウスを眺めて、マッサンとリタさんの魂の一端に触れられたらいいなと思っています。車のCDにはロバート・バーンズの「auld lang syne(なつかしい昔)」、「Comin Thro' The Rye(ライ麦畑で出逢ったら)」を入れておかなくては・・・(^^♪

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