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和田竜さんの「村上海賊の娘」を読み終えました。
前の職場のボスが瀬戸内の出身で、村上水軍の話はちょくちょく聞かされていましたし、一緒にこの地域を旅行したこともありますので、読む前から期待感を持っての読み出しでした。
物語は1576年(天正4年)に毛利氏と織田氏との間に起こった第一次木津川口の戦いをもとにしたものです。織田信長軍によって包囲された一向宗の石山本願寺への兵糧を搬入しようとする瀬戸内の水軍(毛利、小早川、村上など)と、それを阻止しようとする織田の水軍(泉州、眞鍋など)が大阪湾木津川河口で激突した海戦です。 結果は文中にも出てきますが、毛利の水軍の使用する焙烙玉(投げ入れ爆弾のようなもの)などの新種の兵器によって織田の水軍は壊滅的な打撃を受けて敗れ、石山本願寺への兵糧搬入が叶ったとあります。
この戦で男勝りの格好いい立ち回りをするのが、能島村上海賊の当主・村上武吉の娘・景(きょう)。『萩藩譜録』によると武吉の次女が黒川五右衛門元康の妻になったという記述があるようですが、この本の主人公・景は名前共々架空の人物のようです。

終章(下巻P499)の文章がこの2冊の本の全てを語っているように思いました。
『こうして個々人のその後を俯瞰すると、その多彩さに唖然とする。ある者は失意のうちに時代の渦に呑み込まれ、ある者は上手に立ち回り、ある者は父の息吹を受け継ぎ、ある者は時代の流れに身を任せた。それでも、いずれの人物たちも、遁(のが)れがたい自らの精根を受け容れ、誰はばかることなく生きたように思われてならない。そして結果は様々あれど、思うさまに生きて、死んだのだ。』
海戦での物語であり、好き嫌いはあるかもしれませんが、特に下巻は双方の駆け引きがスピーディーで面白いです。そして、この時代に瀬戸内で強大な覇権を握っていた水軍の実態がちょっぴりでも分かるような気がします。

また、膨大な参考文献の一覧が巻末に掲載されて、本文中の注釈で引用されており、歴史書として興味を持たれる方も多いのではと思います。

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